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decoreco:10 Books『調理場という戦場』

2006年11月10日 22:50

デコですこんばんは。ひさしぶりのデコリコはまたしても本。相変わらず時間があれば本ばかり読んでいるので、実は今回とりあげる『調理場という戦場』も読了してから少し時間がたってしまってます。ですので、読んだ直後のものすごいパッションは少し薄らいでしまっているのですが、以来ずっと欠かさず鞄の中に入れています。

仕事を終え深夜の帰り道ひとり夜空を見上げて、訳もなく気持ちがナーバスになりそうな時(もある)、なんともいえない閉塞感を感じてしまう時(もある)、そんな時、この本のちょこって折って印をつけているところを読み返して、おのれを奮い立たせています。夜道で本を読む?のです。僕は。最寄り駅から少々歩くからね。

この本『調理場という戦場』の著者は、斉須政雄(さいす・まさお)氏。東京の三田にあるフレンチレストラン「コート・ドール」でオーナー・シェフとして活躍されているお方。

この本は、斉須氏が20代前半に「とにかくここを離れたい。フランスに行きたい」という思い、自信も確信もなく経験と言っても言葉にならない悔しい日々がたくさんあっただけ、若いがゆえの気負いだけでフランスに渡り、パリ郊外の一つ星レストランで働き始める時から始まります。

調理場ではただひとりのジャポネ(日本人)だから、当然のように言葉が「わからない」。つまりメニューも聞き取れない。そのような中、フランスに着いた日の朝7時半からの四年半はいつ起きていたかもわからない。仕事の嵐の中で「やることは常にある」という状態が続いたそうです。

しかも、フランスの調理場は、日本の「みんなと仲良く」とは事なり、ただ仲良くしたい者はみなに体よく利用されて終わり。相互理解のためには多少の軋轢はあたりまえ「生き抜くための激しさの下地が日本とはまったく違う」世界だったそうです。

毎日朝一番でわかるその日のお客の予約状況。あまりにも多い予約の数。できるはずのない仕事量。極度の緊張感で賄いのバゲットも食べられない。そんな仕事量だけど「ここで働く以上は、やらないと明日はないから泣きが入る場面だけどれども、泣きが入ろうが入るまいがとにかくやるしかない」。休む暇も、もちろん、さぼる暇もない「戦場」のような状況を4年半。

きっと多くの者が泣いて退場していったのだと思いますが、斉須氏は、
「資質もないのだからやりすぎるくらいが当たり前のはず。やりすぎを自分の常識にしなければ、人と同じ水準に保てない。やりすぎても悲しいことはないはず。ただ単に自分のためなのだから。誰に頼まれたことでもない。なりたい自分になるためにやっていること。大げさに英雄視する必要もない。ただ、限界以上の仕事を続けていく生活が10年20年続いた先にある成果だけが楽しみだった」そうです。

斉須氏は、フランスで計6店のレストランを渡り歩きます。そして36歳の時に日本に「コート・ドール」の料理長として戻り、オーナー・シェフとなり以来約20年。いまも現役で活躍されていいます。

この本の中には、斉須氏がさまざまなお店を移りながら、その時その場で自身の体をあちこちにぶつけてタンコブを作りながら考えてきたことが、とってもシンプルに力強い言葉で綴られています。その言葉のひとつひとつは、これから社会に飛び出していく若い人たちや、僕のように時折、何者でもない自分しか自覚ができない中途半端な者にも、ズキンと響くエールに満ちていると思います。

僕は駆け出しのアルバイトの時も含めれば、このデザインという仕事に就いてようやく10年強になります。幸いにもいまでも多くのお客さまと、そして無二の仲間たちと一緒にデザインという仕事を続けることができています。だけれどもたった10年でも、いつの間にか日常が際立ってしまい、クリエイティブにおいても、生活においても、時には見えない壁のようなものを感じてしまうこともあります。

「毎日やっていることを大事にすればおのずと階段が見えてくる」

この本にはこんな勇気が出てくる言葉がつまっています。
まだ何がゴールかもわからないところにいるけれど、未来のゴールに向かって「毎日」を大切に生きていくのだ。と、この本を読むといつも元気になります。

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『調理場という戦場』
斉須政雄 著
朝日出版社 刊


今日も生きざま更新中! 山口デコ

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