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犬一
1979年12月11日 香川県坂出市出身 東京都町田市在住 フリーの妖怪絵師...

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三ツ石

2007年01月20日 17:21

青春18きっぷが二日分残っていたので、
石を拾いに日帰りで熱海まで行ってきました。
この悲壮感溢れる自己満貧乏旅行のお供には、
悩める首長ヨースケ以外は思い当たりませんでした。

先日購入したモードな雰囲気のウォータープルーフブーツに、
遊び心を込めてジャージをブーツにインして準備は万端です。
始発で町田駅に向かいヨースケと合流、熱海に向かいました。
いや、正確な目的地は熱海の二駅手前の真鶴という漁港です。
実はこの旅には、もう一つ別の個人的な目的があったのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【五年前】
私は親戚達と熱海で待ち合わせをしていました。
親戚達は四国から、私は東京から向かったため、
おそらく私の方が遥かに早く着くだろうと思い、
車窓から見えた真鶴に立ち寄る事にしたのです。

短時間でざっと観光しようと思っていた私の目に、
ひどく魅力的な案内写真が飛び込んで来ました。
海中から二本の岩山が突き出し、
片方の頂上には社が立てられ、
両方が荒縄で繋がれていたのです。
これは行くしかないと思ってタクシーに乗り、
その三ツ石(みついし)なる名所に向かいました。

私が到着した頃はすっかり潮が引いていました。
岩間に水溜まりが出来ているぐらいだったので、
これなら水溜まりをぴょんぴょんと飛び越えて、
なんとか鳥居まで辿り着く事が出来ると思い、
海辺に荷物を置いて裸足で駆け出しました。
しかし全ての生命の母たる大海は侮り難く、
フジツボやイソギンチャクが足に絡み付き、
海藻に足を取られ転倒、初春の海に転落、
未知の生物に震え上がりながら挫折、
泣く泣く海辺へ引き返しました。

しかし潮が満ちて来て水溜まりを跳び超えられず、
まだ冷たい海水にじゃぶじゃぶと足を浸しながら、
満身創痍で陸地に至るまでに何度海に落ちた事か。
行きの数倍の時間をかけて荷物まで辿り着くと、
なんと私の大切な荷物が海水で水浸しに!?
買ったばかりのMDウォークマンは修理不能、
着替えはずぶ濡れ、お札はふにゃふにゃ、
その悲しみが激しい怒りに変わるまで、
それほど時間はかかりませんでした。

おぼえとけよ三ツ石!
近いうちに必ず復讐に来るからな!
とひとり憤ってからはや五年が経ち、
未だ復讐を果たせずにおりましたが、
最近石を拾い集めているという事もあって、
今回の旅に踏み切ったというわけであります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

真鶴に着いたのは午前九時頃でした。
一時間かけて歩いて三ツ石に到着後、
ヨースケを待たせて一人で社に向かいました。
前回と同じ轍を踏まないための長靴でしたが、
実際は大して役には立ちませんでした。
太平洋の波は思っていた以上に高くて、
容赦なしに長靴の中に入ってきました。

そして真冬の海水はとても冷たく、
なぜ好んでこんな事をやっているのか、
自分でも分からなくなってきましたが、
歯を食いしばり岩にしがみつきながら、
無心で真鶴岬の突端を目指しました。

しかしアオサノリに足を取られ海に落ちる事数回、
ウメボシイソギンチャク(天然記念物)に鳥肌を立て、
気持ち悪いフジツボを避けながら進んでいましたが、
後半はまるでロッククライミングのような要領で、
フジツボを指でつかんで移動するようになりました。

約三十分後なんとか岩山同士を繋ぐ荒縄の下に到着はしたものの、
岩山の四方は断崖絶壁で、どう見ても登れそうにありませんでした。
突端でしばし無心になって呆けていると、中年の釣り人の姿が。
私がギリギリ辿り着いたこの場所へなんでこんなおっさんが?
「ゴム長靴でここまで来たの?」と話しかけてきたので、
「はい。すべってかなり大変でした」と答えると、
「危ないよ!よくここまで来れたね!」との事。
…帰り道が不安になるやないか!

しかし自力で帰るしかないので、
ジャージのズボンを脱ぎ首に巻き付け、
海に浸かりながら陸地を目指しました。
帰りも何回も滑って転んで海に落ちました。

それでもなんとか無事帰還。しましたが、
下着がびしょ濡れになったので、
仕方なくノーパンで帰宅しました。
石はヨースケが拾ってくれていました。
こんな旅に付き合ってくれてありがとう。
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