石川直樹著『最後の冒険者』を読む。
この本は第6回開高健ノンフィクションショーを受賞した、冒険家・写真家の
石川直樹氏の著書である。
友人に薦められて読んだんだけど、これが面白かったよ。
驚きの連続で、ワクワク感を通り越してコワいくらい・・・
本の冒頭に「神田道夫さんに捧ぐ」とあるが、本の内容は、石川さんの友人であり、
共に大平洋横断の熱気球旅行にチャレンジした神田道夫さんの話が綴られている。
神田さんは2008年の1月31日に、熱気球による大平洋横断の単独旅行に飛び立ち、
いまもって行方不明である。
神田さんは埼玉の給食センターの所長で普通の公務員なのだが、
熱気球による最長飛行時間の世界記録を持ち、ヒマラヤ最高峰ナンガルパット越えにより、
植村直樹冒険賞を受賞している人。
石川さんは、そんな神田さんと出会い、自分の父親ほども年の離れた彼の熱気球への
熱い情熱に惹かれて、2004年に共に大平洋横断の旅にチャレンジすることになる・・・
だがその旅は、日本から飛び立って五分の一も行かないところで真っ暗な海に
墜落するという形であえなく挫折・・・
幸い、近くを通りかかった船に救助され、九死に一生を得ることになるのだが・・・
救助された船上で、石川さんが、やれやれ助かった・・・と思っているところへ、
神田さんは「次はこうやったらうまくいくんじゃないか」と、もうリベンジする気
満々だったのだそうだ。
そして運命の2008年1月31日・・・
神田さんは熱気球による大平洋横断のリベンジを果たすべく、単独で旅立ち、
今もって行方不明となっている。
石川さんは、自分も冒険家と呼ばれるけれども、自分はエベレスト登頂にしろ何にしろ、
人が過去に成し得たことをしただけであって、本当の意味での冒険家ではない。
真の冒険家とは神田さんのような人を言うのであって、前人未到の地が地球上に無くなったいま、
神田さんが、植村直己の系譜を継ぐ、真の意味での冒険者であり、最後の冒険者なのでは
ないか・・・というようなことを述べている。
『最後の冒険者』という本のタイトルも、冒険者としての神田さんへの最高の賛辞の意味が
込められているのだろう。
命を賭けてまでチャレンジを続ける冒険者の執念までは理解しがたいが、
その気持ちは少し分る気がする。
日常を公務員として送っている神田さんにとって、熱気球で前人未到の記録に挑戦している
時こそが、最も命輝く瞬間なのではないかと思う。
だから、死ぬかもしれない危険があったとしても、挑まずにいられなかったのではないだろうか。
石川さんは本著の締めくくりとして、以下のように述べている。
「地理的な冒険が消滅した現代の冒険とは、この世の誰もが経験している生きていること
そのものだとぼくは思っている。日常における少しの飛躍、小さな挑戦、新しい一歩、
そのすべては冒険なのだ。」
かつて岡本太郎も「この道を行けば安全だと分り切った道と、この道を行ったら命を
落とすかもしれないという二つの道に分かれていたとしたら、迷わず、
この道を行ったら命を落とすかもしれない道のほうを選ぶ」と言った。
今の時代、自分で命がけの冒険にでも出かけないかぎり、まず何をやっても命を落とすまでの
ことにはならないだろう。
そう考えたら、石川さんの言うように、人間たるもの、日常生活の中でも、もうちょっと
冒険心を持って、色々な物事にチャレンジしていってもいいような気がする。
そうした日常の中でのちょとした冒険心やチャレンジ精神が、命の炎を燃やし、
人生を輝かせていくことにも繋がるだろうだから・・・
っつーことで、今日からあなたもわたしも冒険者!
人生という荒波を、ホトホトユラユラ、いろいろあっても泳ぎ続けてイキましょう。

最新コメント